(目次)
中小企業診断士試験に合格したい!
とにかく中小企業診断士の試験に合格したい!と願っている方を支援すべく、二次試験に独学で一発合格した私が、実際に試験対策のためにまとめたファイナルペーパーを材料にして、事例別の論点整理と対策の道筋をつける方法をまとめさせて頂きました!
独学で行った対策のため、人によっては合う・合わないはあるかと思いますが、共感できる部分や使えそうな部分だけでも取り込んで頂きまして、二次試験合格を目指して、独学の方もそうでない方も、通勤時やスキマ時間の学習に活用してもらえたらと思います!
事例Ⅰ~Ⅲの共通事項
問題と課題が求める回答方法の違いを認識しておく
複数年の過去問の事例などに取り組んでいるとお気づきになるかと思いますが、知識系の問題は除き、各事例企業における『問題点は何か?』と『課題は何か?』という問いの違いにお気づきになるかと思われます。
これ、設問の要求している事が全く違うという認識は必ずしておいてください。
この違いを認識していないと設問に対してトンチンカンな回答を行う事になり、合格ラインを確保するための回答を行う事が難しくなってくるので、しっかりと違いを認識しておいてください!・・・といっても、こんな事を書くだけでは何のお役にも立たないので、少し解説していきたいと思います。
表記の通りなのですが、ポイントとして一旦まとめさせていただきます。
【問題】とは【現状とあるべき姿のギャップ】
【課題】とは【問題を解決するための手段や施策】
まだ、ピン!と来ていない人もいると思うので、事例Ⅲでありがちなシチュエーションを参考にしつつ考えてみましょう!
【サンプル】
樹脂製品の加工事業を営むC社では、製作納期の異なる複数の製品を取り扱っている。特注仕様の受注製品に対応できる高い加工技術が顧客より信頼を得ており、地域の企業を牽引する存在となっている。C社社長は、自社の強みを維持するための技術者の育成にも注力しており、その結果、社内には十分な数の技術者が在籍している。一方、C社では、受注製品の仕様など細かな顧客とのやりとりは営業担当が行っており、営業担当がとりまとめた発注書の受注日付を基準として生産対応している。このところ、顧客からの複雑な樹脂加工の依頼が増加傾向にあり、少なからず、納期遅延が発生するようになっている。C社社長は現状に危機感を抱き、納期遅延解消のための施策を検討すべく、中小企業診断士へ相談を行うことにした。
さて、事例Ⅲお決まりの納期遅延に関する文章です。サンプルのため、かなりいろいろな条件や背景を省略して記載しておりますが、これを読んだ皆さんは、このC社が抱える『問題』と『課題』について理解できましたでしょうか?
おさらいですが、【問題】とは【現状とあるべき姿のギャップ】で、【課題】とは【問題を解決するための手段や施策】になります。つまり…
問題は、現状(納期遅延がある状態)とあるべき姿(納期遅延がない状態)とのギャップ(納期遅延が発生する状態であること)です。
課題は、問題を解決するための手段や対策(納期遅延発生の理由への具体的な対策)です。
このような違いとなります。よって、例えば設問で
問:C社に発生している問題点を挙げ、解決策を100文字以内で助言せよ。
と問われた場合においては、問題点→対応→狙う効果という流れで記載します。
問題点は、納期遅延が発生していることである。対策として、受注製品の納期を基準とした生産計画を策定し、生産状況を進捗管理し、定期的な計画の見直しを行うことで納期管理し、遅延を発生させないことである。(99文字)
今回はサンプルなので、『納期遅延』が当たり前の問題点過ぎて記載することを悩むかもしれませんが、当たり前のことが出来ていない状態=問題(納期遅延が発生していること)ということですので深く悩みすぎないようにしてください。
また、上記の回答では、与件文章から生産計画・生産統制などの生産管理が出来ていない事が伺えますので、“できていない事を、できるようにする(生産計画→生産統制)”という観点で考えて回答文を構築する事で、設問が要求するポイントを外さない回答ができると考えられます。
そして、最後は問題が解決するような結果(納期遅延が発生しないこと)を導きます。尚、今回は100文字でしたので省略しましたが、120文字設定の回答であれば、『生産工程を短サイクル化して』などの文言を追加してもいいかもしれませんね。
さて、では次の設問はどうでしょうか?
問:顧客の依頼が増加しているなかで、受注量が増加しても納期遅延を発生させないためにC社が対応すべき課題について、100文字以内で述べよ。
と問われた場合においては、課題→対応→効果という形になります。
課題は、ポイントの通りで問題(納期遅延)を解決するための手段や対策(納期遅延発生の理由への具体的な対策)になりますので、その点を踏まえた回答を構築していきます。
課題は、営業担当と技術者の連携を強化することである。商談の席に技術者が同行することで複雑な仕様や受注に関する情報をタイムリーに共有し、生産計画に反映させて生産サイクルを短縮化し、納期遅延を防止する。(99文字)
少し飛躍させてみると…
課題は、情報共有化のためのITシステムの導入である。受注品の加工内容、納期、生産の進捗状況を一元管理し、効率的な生産計画を定め、生産統制を徹底することで重複業務の削減を行い、納期遅延を防止する。(96文字)
などの回答も検討できるのではないかなと思います。
今回のサンプルにおいても、考え方としては、問題(納期遅延)に対して、どんな手段(連携やIT化など)を用いて、問題が生じないこと(納期遅延しないこと)を得られる効果として狙うという形になります。
この、問題と課題の違いについてなんとなくでも良いので理解しておくと、設問で何を問われているのか?と考えた時に大きく外してしまうリスクを減少させることができるように思われます。
ちなみに、ここで紹介したのは『基本の型』のようなものですので、色々な設問に対してこの型を当てはめてみる事で、自分なりの回答方法を習得してもらい、各事例の過去問で練習を行って、実力を高めていただけたらと思います。
少しでも皆さんのお役に立っていたら幸いです!
”だ・な・ど・こ”では、特に効果の書き忘れに注意!
診断士二次試験の勉強時に、おそらく”だ・な・ど・こ”は良く聞く事になるかと思います。ご存知の通り、”誰に(対象)、何を(施策)、どのように行い(働きかけ)、効果(期待含む)”の頭文字ですね。
この、だなどこセオリーは、実際の試験回答においても、回答に用いる事が非常に多いので、見直しなどを実施する際にも抜け漏れを確認することができます。
ただし、ビックリするぐらい『効果』の記載が抜け落ちます!
気を付けていても!驚くほど!最初から忘れていたと思うほどに!笑
…ですので、効果については設問時に常に書き漏れないように意識してください。
回答文の満足度は効果で決まる。
ぐらいの気持ちで取り組んでもらえた方が、最後の数点を獲得できるかと思います!
事例別 方向性と論点整理で対策の道筋をつける
中小企業診断士の二次試験の各事例には、それぞれ頻出の論点があります。
そこで、今回は各事例で良く問われる論点と回答の方向性について、軽くまとめさせていただき、独学者や初回の挑戦者の皆様に試験の全容を掴んでもらえればと考えています。
ここで記載する内容は、どちらかというと箇条書きのまとめのような形ですので、各事例ごとの徹底対策については別途記載していく予定です!
事例Ⅰ:経営資源は分散させず集中投下
【頻出語録】
戦略…差別化集中、経営資源の活用、競合との競争回避、シナジー
事業…ノウハウの蓄積、利益責任、意思決定の迅速化、コア・ノンコア
個人…権限委譲、教育、評価制度、ノウハウ、士気、モラール、専門
論点① A社の強みにフォーカス
原則は、A社が主体的に何をしたのか?という目線で考える。
事業の変遷にも注意した方が、強みは切り出しやすい。
<強み(~であり)>
<強みを育成・活用(~なため)>
<状況(~となった)>
論点② A社の弱みにフォーカス
明白な場合が多いので、取り漏れのないように注意する。
<弱み(~であり)>
<具体的な内容(~なため)>
<状況(~となっている)>
論点③ 経営環境を全体的に分析する
基本的にはSWOTのO/Tを拾って説明します。
A社自体が関連する環境の場合は、内部環境の視点も含めて考える。
<特徴(外部環境)>
<A社との関連(内部要因)>
<状況(~である)>
論点④ A社の組織体制や戦略に対する課題(頻出!)
原則、経営課題に対して、組織の視点で回答を実施する。
内部組織体制や、外部連携を中心に回答する。
<特徴(~な環境のため)>
<対策(~が必要)>
<対策の結果>
回答骨子は
『限られた経営資源』を『施策(絞り込み、コア・ノンコアの切り分け、省力化)』により『集中化・差別化・効率化』し、『経営リスクを分散』する。
このセオリーで対応するとまとめやすいです!
論点⑤ A社の事業展望や経営課題に関して
原則、事業変遷、社長のビジョンや現状の経営課題などから検討します。
<実施する対策(~を行い)>
<期待する効果(~し)>
<方針(~する)>
論点⑥ 組織や人事制度
原則、採用や、報酬、育成・教育、評価制度、配置転換の切り口を用いる。
<実施する対策(~を行い)>
<目的(~する)>
<効果(~する)>
事例Ⅰは基本的に、設問の制約条件を守る事。
また、図などにおいてはタイトルが意味を持つことが多いです。
事例Ⅱ:4P+Tを意識した多面的アプローチ
基本は、固定客を獲得し、リピーター化し、客単価を向上して、継続的な売上・利益の確保を行う方向で考えていくとスムーズです。
【頻出語録】
だ…新規・既存客、リピーター、富裕層、子育て世代、介護、顧客DB活用
な…高評価アイテム、独自技術の蓄積、需要、顧客ニーズ、製品ライン
ど…紹介制度、イベント・教室、写真・DM・チラシ、ノベルティ、双方向
こ…競争回避、差別化、高付加価値、顧客愛顧を高める、売上拡大
論点① B社の現状を分析する
原則は、SWOTの切り口が重要、素直に与件を読み取って問題ありません。
<S/W/O/T>
回答骨子は
1.強みのある企業の戦略
『技術や製品の強み』を、『ターゲット』に対して行い、『高付加価値品・差別化・フルライン』の戦略を実施している。
2.弱みのある企業の課題
課題は、『競合や価格競争などの市場の脅威』に対し、『弱み』な状況であり、『他社と差別化できていない』点である。
このセオリーで対応するとまとめやすいです!
論点② B社の実施するプロモーション戦略
原則、だ・な・ど・こで回答を構成する。
プロモーションのターゲットが複数存在する場合など、複数の施策が記載可能な設問であれば、コンパクトにした回答を多面的に複数記載する。
<誰に>
<何を>
<どのように>
<期待する効果>
論点③ B社のターゲットを分析する
原則、図などが与えられていた場合は、図から素直に読み取る。
例えば、年齢の増減の乖離で「上回る」ところ&与件にある環境をミックスする等。
<デモ・ジオ・サイコの切り分け>
<4C分析>
回答の骨子は
人数が多く、裕福な富裕層に対して、品質と付加価値の高い・こだわりの商品を販売することで、競合と差別化して売上を拡大することを検討する。
論点④ 商品の流れ、流通に関する戦略
原則、最終的には利益に繋がる視点で回答する。
<誰に>
<どのように差別化を実施するのか?>
<期待する効果> 重要!
論点⑤ 売上の向上と継続性の確保
原則、固定客×リピーター増加は鉄板の目標。
そのために、どのような関係性を構築するのかを記載する必要あり。
短期と長期の目線の切り分けが必要!
<誰に>
<何を>
<どのように>
<期待する効果> = 売上拡大・継続的な利益確保
回答の骨子は
『ターゲット』に対し、『強みを活かせる(何を)』+『施策(どのように)』を実施し、『期待する効果』をあげる。
令和2年の2次試験でも出題されましたが、【アンゾフの成長マトリクス】や【4つのブランド戦略】などについては、理解しておいてください!
事例Ⅲ:付加価値向上、コスト削減、生産性向上が柱
基本として、売上拡大・新規顧客増加を回答に持ってくるのではなく、技術向上による差別化や付加価値向上、生産方法の改善によるコスト削減や生産性向上を軸とした回答を行う方が設問の要求に沿いやすいです。
【頻出語録】
Q…ノウハウ、シナジー、作業標準化→マニュアル化→教育による共有化
C…一貫生産体制、生産計画の数量確認基準、重複業務の削減
D…納期短縮、納期の遵守、生産の短サイクル化、物流センターの構築
論点① C社の現状を分析する
原則、製品、生産管理、生産効率の観点から強み弱みを回答します。
<強み(~である)>
<弱み(~である)>
弱みを語る場合は、売上依存、高コスト体質、管理体制の不備、設備が老朽化、営業力が無いというのが定番のパターンです。
論点② C社の生産管理体制について
原則、生産計画の実施→生産統制の検討→実行で話を進めます。
狙いどころは、QCDで言うところのC(コスト)とD(納期)です。
<課題点(~すること)or問題点(~な点)の切り分け>
<対応内容(~し)>
<効果(~する)>
全社的な問題か、ある特定事象の問題なのかは必ず切り分けてください!
回答の骨子は
1.課題への対応が問われている場合
課題は、『課題』に対応すること。対応策は、『対応』を行うこと。(文字数が余っていれば効果も加える)。
2.問題点からの改善が問われている場合
問題は、『問題点』があるため、『改善策』を行い、『効果』をあげる必要がある。
論点③ C社の生産性の向上について
原則、生産性向上は、標準化→マニュアル化→教育(OJT)の実施で検討する。
生産効率化は、DB化→一元管理→共有化で検討する。
<課題点(~すること)or問題点(~な点)の切り分け>
<解決(~し)>
<効果(~する)>
回答の骨子は
1.課題への対応が問われている場合
課題は、『課題』に対応すること。対応策は、『解決策』を行い『効果』を出すこと。
2.問題点からの改善が問われている場合
問題は、『問題点』があるため、『解決策』を行い、『効果』をあげること。
論点④ C社の今後の発展について
SWOTや経営資源を用いて回答に結びつける。
外部環境は、市場の新規ニーズや協力できるパートナーの存在、将来への展開(良くも悪くも)といった目線で他の設問との関連性も意識して回答する。
設問要求に応じて、強みを強化するのか、弱点を克服するのかという回答のベクトルを判断する。
<施策(~を行う)>
<理由(~ため)>
<効果(~する)>
回答の骨子は
1.課題への対応が問われている場合
『強化すべき施策』に取り組み、その『理由』を達成し、『効果』をあげる。
事例Ⅲの特徴として、制約条件を指定して回答させる設問が登場することがあります。例えば、作業方法のみ、教育のみ、システム変更のみ…など。
また、生産の他社移転や海外進出に係るリスクに関する設問が登場することもありますが。その際には、品質管理リスク、費用リスク、カントリーリスク、技術流出などの秘密保持に関するリスクなどの課題を挙げると対応しやすいです。
事例Ⅳ:経営分析から意思決定までのプロセスを意識
論点① 経営分析
原則、経営指標の選択に当たっては、与件分に記載されている項目に関係するものを優先することになります。ただし、与件分から類推も必要になる場合もあります。
・借入金が多く、自己資本が少ない
→ 借入金依存の体質で安全性が低い、支払い利息が大きいなど
・円安や原材料費の高騰
→ 原価UP → 売上高総利益率の悪化など
論点② CVP計算・セグメント別の収益確認等
資料外部の制約の要素を確認する必要があります。(税率の%など)
売上が増加するということは、変動費も増加するという事は念頭においてください。
個別の貢献利益や共通利益を求める設問では、需要量で求められている数字通り生産した場合に、限界利益では固定費回収ができずに赤字になる事業もあるので注意!
論点③ 意思決定会計・NPV
基本的に、計算が複雑で難解な場合は、回答を後回しにしてください!
投資の意思判断は、原則、NPVの合計-投資額(COF)が正である事です。
尚、割引率の適用範囲には注意が必要です。過去には、現在価値に戻す際に、「当年」に合わせるために年金現価係数に、更に複利現価係数を掛けるパターンなども出題されています。
ファイナンスのFCF
営業利益 ×(1-税率)+減価償却費-設備投資額-運転資本増減額
論点④ キャッシュフロー計算書
基本的に、覚えてください!笑
貸借対照表上の未払いの利息や法人税に注意し、諸表から読み取れない利益の積み増し(配当支払いや剰余金上乗せ)の有無についても確認が必要です。
アカウンティングのFCF
営業CF+投資CF
論点⑤ その他
知識系の問題も、ちらほらと出題されますのでご注意ください。
<デリバティブ>
為替予約は、差損の発生は防ぐことが出来るが、差益の便益は得られない。また、取引の解除はできない。
オプション取引は、差損が出た場合に権利行使して損失回避が可能、ただし、プレミアムの支払が必要。
<総資本に対する期待CF>
総資産×WACCで算出
一見、計算問題ばかりですが、基本的には事例の与件文で与えられた企業の状況をベースにした回答を行う事で、経営分析以降の回答の方向性も定まりますので、与件はしっかり読み込んでください。
おわりに
冒頭でも申し上げた通りですが、二次試験を初めて受験する方や論点整理が未だ終了していない方、まだ具体的な内容がピンと来ていない方にとって、少しでもお役立てできるのではないかと思い情報提供させて頂きました。
少しでも多くの皆様にとって二次試験の得点を向上させるための頭の整理にお役立ていただけましたら幸いです!